さつきのことば

皐月は5月の和名

飛行機雲

陰暦5月を「皐月(さつき)」と呼びます。

「五月晴れ」という言葉もあるほど爽やかな季節ですが、言葉の由来は、田に稲の早苗を植える時期の「早苗月」とも、「五月雨月(さみだれづき)」ともいわれています。

 

5月の和歌や昔の言葉について書いた文章をご紹介します。

 

たけのこしょうず

竹林

 

我がやどのいささ群竹吹く風の音のかそけきこの夕へかも
(万葉集 巻 19 4291 大伴家持)

意味: わたしの家の小さな竹(たけ)の茂みに吹いている風の音がかすかに聞こえるこの夕方です。

作者は万葉集の編纂者とされる大伴家持(おおとものやかもち)。

5月15日~5月19日頃は「竹笋生(たけのこしょうず)」

竹の子が地上に頭を出すころ。

立夏は夏のはじまり。さわやかな風の吹き渡る季節。
だんだん暑くなっていきますね。

(2018.5.18)

むぎのときいたる

小麦

麦秋至(むぎのときいたる)5月31日~6月4日頃。
麦は五穀の一つで、秋に種をまき、初夏に収穫する作物です。

「古事記」に、この「五穀の発祥」について有名な神話が出てきます。

是(ここ)に、八百万の神、共に議(はか)りて、速須佐之男命(はやすさのおのみこと)に千位(ちくら)の置戸(おきと)を負ほせ、亦、髯と手足の爪とを切り、祓へしめて、神やらひやらひき。

又、食物(くらいもの)を大気都比売神(おおげつひめのかみ)に乞ひき。

爾(しか)くして、大気都比売、鼻・口と尻とより種々(くさぐさ)の味物(うましもの)を取り出だして、種々に作り具(そな)へて進(たてまつ)る時に、速須佐之男命、其の態(わざ)を立ち伺ひ、穢汚(けが)して奉進(たてまつ)ると為(おも)ひて、乃(すなわ)ち其の大宣都比売神(おおげつひめのかみ)を殺しき。

故(かれ)、殺さえし神の身になりし物は、頭に蚕なり、二つの目に稲種なり、二つの耳に粟なり、鼻に小豆なり、陰(ほと)に大豆なりき。

故是(かれここ)に、神産巣日御祖(かむむすひのみおやのみこと)、茲(こ)の成れる種を取らしめき。

高天原(天上の神の世界)を追われた須佐之男命(すさのおのみこと)は、地上の葦原中国(あしはらのなかつくに 日本の古称)に下りました。
須佐之男命が大宜津比売(おおげつひめ) の神殿で食べ物を乞うと、大宜津比売はさまざまな料理を出して須佐之男命をもてなしました。

しかし、大宜津比売が鼻や口、尻から様々な食材を取り出して調理する様子を覗き見た須佐之男命は、食物を汚して差し出したと怒り、大宜津比売を殺してしまいました。

すると、その死体から様々な食物の種などが生まれました。
頭に蚕、目に稲、耳に粟、鼻に小豆、陰部に麦、尻に大豆。
神産巣日御祖(かむむすひのみおやのみこと)はこれらを取って「五穀」の種としたと伝えられています。

麦の穂が実る頃を表わす「麦秋(ばくしゅう)」は初夏の季語で、さわやかな初夏の風が麦畑を吹き渡るさまと、風に揺れる豊かに実った麦の穂を彷彿させます。

(2019.5.31)