しもつきのことば

霜月は11月の和名

紅葉

 

 

霜月は「しもつき」と読み、現在は紅葉の季節として知られていますが、本来は陽暦12月のことで「霜降り月、霜降月(しもふりつき)が省略されて「霜月(しもつき)」になったとされています。

霜月にまつわる言葉を集めてみました。

にじかくれてみえず

虹

 

村雲のたえまの空に虹たちて時雨すぎぬるをちの山のは    藤原定家 (玉葉集冬歌)

 

11月22~26日は「虹蔵不見(にじかくれてみえず)」
陽射しが弱まり、虹を見ることが少なくなります。

 

権中納言藤原定家(ふじわら の さだいえ/ていか)は、鎌倉時代初期の公家で小倉百人一首の撰者です。

定家と親交の深い鎌倉幕府の御家人・歌人の宇都宮蓮生は、京都嵯峨野に建築した彼の別荘・小倉山荘の襖の装飾のために、定家に色紙の作成を依頼しました。

そこで定家は、飛鳥時代の天智天皇から鎌倉時代の順徳院まで、100人の歌人の優れた和歌を一首ずつ選び、年代順に色紙にしたためました。
これが後の歌かるた「百人一首」となるのです。

ほとんどの歌集が冊子で作られるのに、「百人一首」は「色紙の集まり」だったところが興味深いですね。

(2018.11.25)

きんせんかさく

黄水仙

 

水仙や寒き都のこゝかしこ   与謝 蕪村

11月17日~11月21日は「金盞香咲(きんせんかさく)」
七十二候の「金盞花」は「水仙」の花のことです。

「水仙」は東麓破衲の漢和辞書『下学集』(1444)に漢名を「水仙華」、和名を「雪中華」と紹介されていて、「金盞(きんせん)」は水仙の異名として使われていました。

金盞花は、南ヨーロッパの地中海沿岸地方原産で、江戸時代の末に中国から渡来しました。
花の咲いている期間が長いことから「常春花」「長春花」「ときしらず」などとも呼ばれます。

キンセンカ

花の名前は時代につれて変わるもので、時々誤用されることがありますが、どちらもきれいな花ですね。

(2018.11.19)

ちはじめてこおる

霜柱

霜柱 氷の梁に雪の桁  雨の垂木に  露の葺き草

上棟式・棟札などにうたわれる「火伏」の歌です。

この歌の作者については、弘法大師、日蓮、鹿島明神など、さまざまな説がありますが、どれも決め手がなく、いまだに作者がはっきりわかりません。

日本の古典文学には、このような「読み人知らず」の素晴らしい歌がたくさんあります。

11月12日~11月16日は地始凍(ちはじめてこおる)。

朝に霜が降り、霜柱がみられるところもあります。
夜の冷え込みが厳しくなり、いよいよ冬です。

(2018.11.12)

つばきはじめてひらく

椿

山茶花の垣一重なり法華寺 夏目漱石

法華寺とは奈良の法華寺のこと。

貧しい人のために悲田院や施薬院を作った光明皇后は、法華寺に空風呂を作って千人の垢を流したという伝説があります。

11月7日~11月11日は「山茶始開(つばきはじめてひらく)」

山茶花が咲き始める頃。

冬枯れの初冬の景色の中で、赤い椿は目にも鮮やかです。

(2018.11.8)

もみじつたきばむ

 

鹿

 

奥山に 紅葉踏みわけ鳴く鹿の 声きく時ぞ秋は悲しき 猿丸大夫 『古今集』

(人里離れた奥山で、紅葉を踏み分けながら、雌鹿を呼ぶために鳴いている雄鹿。その声を聞くときこそ、ひときわ秋の悲しさを感じる)

 

百人一首にも登場する有名な和歌ですが、この作者の猿丸太夫は「三十六歌仙」の一人にも数えられているのに、「生没年不詳のため架空の人物との説もあり」という不思議な存在の歌人です。

11月2日~11月6日は楓蔦黄(もみじつたきばむ)
もみじや蔦が色づいてくる頃。
いよいよ秋も深まっていきます。

(2018.11.2)