はづきのことば

葉月は8月の和名

湖

葉月は陰暦8月のことで現在の9月にあたります。

「葉月」なかでも有力だとされている説は「葉落ち月(はおちづき)」が「葉月(はづき)」に転じたというものです。現代の9月にあたる葉月は、落葉や紅葉が始まる時期。それが「葉落ち月」と呼ばれるようになったとのでは、といわれています。

蜩(ひぐらし)と正岡子規

お寺の参道

 

日中は、外に出ると息苦しいほどの暑さが続く豊中も、夜は涼しくなってきました。

今年は暑さのせいか、あまり蝉の鳴き声もしない夏でした。

 

蜩(ひぐらし)に一すぢ長き夕日かな  正岡子規
日がだんだん短くなるこの季節に似合う俳句です。

(2017.8.29)

てんちはじめてさむし

壁

 

富士の雪 我津の国の 生れ也  上島鬼貫

津の国とは摂津国(現在の大阪北部地域)あたりをさします。
松尾芭蕉と並ぶ俳人で「上島鬼貫は1661年(万治4年)、伊丹の酒造家・上島宗次の三男として生まれました。

武家奉公のかたわら「誠のほかに俳諧なし」の言葉どおり、俳諧に真摯な態度で臨み、「東の芭蕉、西の鬼貫」と呼ばれた俳人です。

9月2日は鬼貫忌。
伊丹市では俳句のコンクールが開かれます。

天地始粛(てんちはじめてさむし)は8月28日~9月1日頃。
ようやく暑さが静まる頃。
日中はまだまだ暑く、夏の気候が続きます。

(2018.8.27)

 

ふかききりまとう

川霧

8月17~8月22日頃を七十二候で蒙霧升降(ふかききりまとう)とよみます。
森や水辺に白く深い霧がたちこめる頃。

春に山腹などの遠景に淡く掛かっている霧は「霞」と呼ばれます。

同じ現象で春に起きるものは「霞」と呼ばれてますが、秋に起こるもの「霧」と呼ばれ、季語では「霞」が春、「霧」が秋と分類されています。

まだ日中は暑いですが、朝夕はひんやりとしてきて、秋の到来を思わせます。

(2018.8.17)

蓮の物語……雄略天皇と赤猪子の悲恋

蓮

日下江(くさかえ)の 入江の蓮(はちす) 花蓮(はなはちす) 身の盛り人 羨(とも)しきろかも
(日下江(河内国にあった潟湖)の入江の蓮。蓮の花のように美しい若い盛りの人がうらやましい)

美しき乙女・引田部の赤猪子(ひけたべのあかいこ)の歌です。


雄略天皇は泊瀬の三輪川に遊んだ時、川のほとりで洗濯をしている美しい少女・引田部の赤猪子に出会います。

御諸(みもろ)の 厳白樫(いつかし)がもと 白樫かしがもと ゆゆしきかも 白樫原童女(かしはらをとめ)

(三輪山の神聖な樫の木の下、白樫の木の下は、侵してはならない場所。触れるのも憚られるよ。橿原の乙女は)

天皇は赤猪子に「おまえは夫を持つな。そのうち私が召そう」と言い残して、宮に帰りました。

そして赤猪子が天皇のお召しを待っているうちに80年が過ぎました。

いつまでたっても、天皇は迎えに来ません。

意を決した赤猪子は、たくさんの引き出物を供に持たせて宮中に参内します。

御諸(みもろ)に 築つくや玉垣 築き余し 誰たにかも依らむ 神の宮人
(三輪山の大神(おおみわ)神社に美しい垣を土で築きました。すっかり築き終えて余った土のように無用に残ってしまった私は、誰に身を寄せればよいのでしょう。神社の巫女みたいな私は)

日下江(くさかえ)の 入江の蓮(はちす) 花蓮(はなはちす) 身の盛り人 羨(とも)しきろかも

これが、その時に赤猪子の詠んだ歌。

約束を忘れてしまっていた天皇はたいそう驚き、赤猪子を不憫に思い、歌を読みました。

 

引田(ひけた)の 若栗栖原(わかくるすばら) 若くへに 率ゐ寝てましもの 老いにけるかも
(引田の地の若い栗林のように、若い時に一緒に寝たかったのに、お前は年老いてしまったなあ)

 

赤猪子はこれを聞いて涙で赤染めの袖を濡らし、天皇から多くの宝物をいただき、三輪へ帰りました。

とても悲しい蓮の物語。
万葉集」「古事記」に載っていますので、興味がある方はいかがでしょうか。

(2017.8.15)

お盆(盂蘭盆会 うらぼんえ)について

古民家月更けて猫も杓子も踊かな 与謝蕪村

蕪村の句に出てくる「踊り」とは盆踊りのことです。

お盆には亡くなられた方を偲んで、仏前に五供(ごくう)を供えます。

五供とは、香、花、灯明、浄水、飲食の5種類のお供え物です。
ほとけ様の食べ物だと言われている香(こう)。
香り高いお線香を毎日あげることが、供養につながります。

仏さまの世界をさらに高める花。
故人が好きだった花を供えましょう。

灯明は光はほとけ様の象徴。蝋燭で仏前を明るく照らします。
ゆっくりと燃えて、やがて消えていく様子が、人生の無常を表すと言われています。

清浄な水を供えることによって、おまいりする人の心を洗う浄水(じょうすい)。

毎日家族が食べるものと同じものをお供えする飲食(おんじき)。

お盆には、普段会わない家族も集まります。
故人を偲んで、ゆっくりと家族で語らってみてはいかがでしょうか。

(2018.8.12)

すずかぜいたる

ほおずき

 

涼風のまがりくねって来たりけり 小林一茶

8月7日~8月11日は涼風至(すずかぜいたる)

夏の暑い風から、秋の涼しい風に変わりはじめる頃。

 

出歩くのもつらい暑さの日々が続いていますが、少しずつ虫の音も聞こえるようになっていきます。

(2018.8.6)

たいうときどきふる

草原夏は意外に雨が多い時期です。

8月2日~8月6日は大雨時行(たいうときどきふる)。

夕立や台風などの夏の雨が激しく降る頃。

夕立(夏の季語)は別名「白雨(はくう)」。
午後から夕方にかけ、突然降りだすどしゃぶり雨のこと。

湿度の高い蒸し暑い日。
夏の濃い青空に、むくむくと湧き上がる入道雲(積乱雲)は夕立の兆し。
白い入道雲の裾が次第に灰色に染まると、突然の稲光と雷、激しい雨。

夕立にひとり外見る女かな  宝井其角

近江国膳所藩御殿医・竹下東順の嫡男として生まれた其角は、松尾芭蕉のもとで俳諧を学びました。
「蕉門十哲の第一の門弟」と呼ばれる其角ですが、その作風は師の芭蕉とは対照的に派手。
平明で口語調の「洒落風」を確立し、芭蕉の没後は「江戸座」を開きました。
其角の句は、夕立を避けて雨宿りする浴衣姿の女性、そのやるせなさと色気を視覚的に表現しています。

夕立が去った後は、風が涼しくなって過ごしやすくなります。
そうして季節は少しずつ秋へ近づいていきます。

(2018.8.1)