霜月の色…韓紅(からくれなゐ)
霜月は紅葉の季節
ちはやぶる神代もきかず竜田川からくれなゐに水くくるとは
在原業平(古今和歌集)
百人一首でも人気のある和歌です。
この歌に出てくる「からくれなゐ」とは「韓紅」、「みずくくるとは」は絞り染めの一種。
竜田川を流れていく紅葉の様子を、赤い絞り染めの反物にたとえたもので、『伊勢物語』の作者で、平安時代きってのプレイボーイとされる業平らしいセンスの歌だと思います。
貴人に愛された「からくれなゐ」
奈良時代に唐から伝わった「からくれなゐ」。
「紅の八塩(くれないのやしお)」と呼ばれ、高価な紅花を惜しげもなく使って、何度も染めて深みを増した紅赤色は、貴人だけが身につけることを許された色でした。
竜田山と竜田姫
竜田川は奈良の竜田山のふもとを流れる川。
竜田山に住む「竜田姫」は染物と織物が得意な女神。
春の桜の名所「佐保山」の「佐保姫」と「竜田姫」は一対の存在で、「春」と「秋」の季語。
竜田川の色鮮やかな紅葉は、今も昔も「からくれなゐ」を惜しげもなく、人々に披露してくれます。