しわすのことば
師走は12月の和名
師走は「しわす、しはす」と読み、語源にはさまざまな説がありますが、平安末期の「色葉字類抄(いろはじるいしょう)」の「師馳す(しはす:師匠である僧侶が、お経をあげるために東西を馳せる月)」とを語源とする説が有力です。
年の瀬のあわただしい師走のころの昔の言葉を集めました。
くまあなにこもる
ある雪の日、上郷村の熊という男が友人と六角牛に狩りに行くと、ある岩の陰から大きな熊が現れた。矢を射るのには近すぎだので、熊(人)は銃を捨てて熊(獣)に抱きつき、ともに雪の上を転んで谷へ下った。熊(人)が熊(獣)の下になり水に沈んだので、その隙に熊(獣)を退治した。熊(人) は水にも溺れず、数か所熊の爪の傷を受けたものの命に支障はなかった。
『遠野物語』の『熊』という話です。
『遠野物語』は東北の遠野地方の民話を集めたもので、不思議な話がたくさんあります。
12月11日~15日頃を「熊蟄穴(くまあなにこもる)」といい、寒さの余り熊が冬眠のために穴に隠れる季節をさします。
そろそろ新しい年を迎える準備で忙しくなる季節でもありますね。
(2018.12.11)
そらさむくふゆとなる
冬はつとめて。雪の降りたるは言ふべきにもあらず、霜のいと白きも、またさらでもいと寒きに、火など急ぎおこして、炭持て渡るも、いとつきづきし。
昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火も、白き灰がちになりてわろし。
『枕草子』 清少納言
(冬は早朝がよい。雪が降った朝は言うまでもなく、霜がとても白い時も、またそうでなくてもとても寒い時に、火などを急いでおこして、炭を運んでいくのも、たいそうふさわしい。昼になって、寒さがやわらいでいくと、火桶の炭火も白い灰が多くなって見た目が悪い)
12月7日~12月10日頃を「閉塞成冬(そらさむくふゆとなる) 」といいます。
いよいよ冬将軍の到来です。
冬至
山国の虚空日わたる冬至かな(やまぐにの こくうひわたる とうじかな)
飯田蛇笏(いいだだいこつ)の冬至の句です。
冬至 (とうじ) は12/22頃の一年中で最も夜の長い日。
この日を境に日が伸び始めることから、年の始点と考えられた日。
冬至南瓜や柚湯の慣習が残る日。
まもなくお正月です。
(2017.12.22)
たちばなはじめてきばむ
橘は、実さへ花さへ、その葉さへ、枝に霜降れど、いや常葉(とこは)の木
(橘は実や花やその葉もすばらいものですが、枝に霜が降っても、ますます栄える常葉の木ですね)
天平8年(西暦736年)11月、左大辨(さだいべん)葛城王(かつらぎのおおきみ)らに橘氏(たちばなし)の姓を賜ったときに聖武天皇が詠まれたとされています。
七十二候 橘始黄(たちばなはじめてきばむ)
12月2日~6日は橘の実が黄色くなっていく頃。
橘とは柑橘のことで、古くから日本に自生していました。
常緑植物で「永遠」を意味する不老不死の実だと珍重されていたようです。
(2017.12.3)