卯月の色…桜色
桜色は山桜の色
桜色に衣は深く染めて着む 花の散りなむ後の形見に
紀有朋 (きのありとも) 『古今和歌集』
桜色は赤みを含んだ淡い紅色のこと。
西洋の桜色「チェリー」は桜の実の皮の色で濃紅色ですが、日本の桜色は「山桜」の花の色。
現在、「桜」のイメージが強い「ソメイヨシノ(染井吉野)」とは別の品種です。
梅から桜へ…花見の歴史
日本の花見の起源は、奈良時代の貴族の行事だと言われています。
当時の「花見」は、中国から伝来した「梅」でしたが、平安時代には「桜」に代わりました。
「桜の花見」が初めて歴史の舞台に登場するのは、812年3月28日(『日本後紀』弘仁3年2月12日)。
嵯峨天皇が神泉苑で行った「花宴の節(せち)」です。
831年(天長8年)からは、「桜の花見」が宮中の定例行事として取り入れられ、貴族の間で流行していきます。
慶長3年(1598年)に豊臣秀吉が「醍醐の花見」を催しました。
醍醐寺に畿内や吉野から取り寄せた700本の桜を植えさせ、1,300人の諸大名を招き、茶会や歌会を開いた盛大な花見の様子は、今も語り伝えられています。
「山桜」から「染井吉野」へ
江戸時代になると河川が整備され、護岸のために柳や桜が植えられるようになり、「花見」は町人の春の行楽になりました。
町人に愛された桜は、江戸末期には300種類を超える「桜」があったといわれています。
今の「桜」の代名詞「染井吉野」は、その頃に、江戸の染井村に集落を作っていた造園師や植木職人達によって作られた品種。
葉より先に花が咲き、開花が華やかなので、明治になると全国の河川敷や学校、街路樹などに利用されるようになりました。
今年も桜が美しい季節になりましたね。