紙と本の話 過去記事まとめ 2015.6.21~2017.4.12
紙と本
2015年6月21日から2017年4月21日までに書いた、紙と本の話をまとめました。
出版の風景
もう亡くなってしまいましたが。
私の親戚……祖父や叔父や叔母は、本が好きで、広報誌や句集などの編集に携わることが多かったのです。
祖父も叔父も叔母も、仲間と一緒に自費出版することがあって、中学生の頃、よく出版記念パーティーに呼ばれました。
みんなで集まって「いい本ができたねえ」と喜び合う。
それが私が最初に見た「出版」の風景。
北摂叢書も、出版のご依頼主に、そんな喜びを与えられる存在になりたいと思っています。
(2017.4.12)
本棚、どうしてますか?
みなさんは大切な本をどう収納されていますか?
まさか「押入れに山積み」なんてことはないでしょうね。
本は置いておくだけでボロボロになっていきます。
押入れの湿気は本の大敵。
ちなみに「大丈夫。うちの本棚は日当たりのいいリビングにある」という方もアウト。
直射日光や蛍光灯に含まれる紫外線は本の大敵です。
本が虫に食われたりカビが生えたりしないように、常に虫やカビの温床となるホコリを取り除き、本棚も定期的に掃除しなければなりません。
平成22年に定められた『東京都立図書館 資料保存ガイドライン』によると、職員が常駐する状態の書庫で、本を保存するのに適した環境は
温度が18~22℃
湿度が45~55%
本当はもっと温度湿度が低い方が、本の保存に適しているのですが、人がいる場所は、どうしても温度湿度が上がり気味。
これが本の保存に適したギリギリの環境です。
「温度が18~22℃で湿度が45~55%?そんなの無理」と思われる方も多いでしょうが、これに近い環境を目指せばよいのです。
私はダニ・カビ・ハウスダストのアレルギーがあって、皮膚が紫外線に弱いのですが。
紫外線カット機能のあるカーテンをつけて、すべての部屋と押入れ、クローゼットに温度計と湿度計を設置して、家の中の温度と湿度を管理しています。
大切な本を守るために、普通の家庭でもできることがあります。
それは自分と家族にとっても、快適な環境になると思います。
(2016.12.11)
様々な紙
「タント」「マーメイド」「レザック」「ヴァンヌーボ」「パミス」「サンダースメタリック」
「ニューベルネ」「江戸小染」「彩雲」「里紙」「新鳥の子」
「かさね」「玉しき」「岩はだ」「風光」……
いったい何の名前だと思います?
実は全部紙の名前なんです。
良質な紙文具を作る「竹尾」は、文具愛好家の間では有名な店。
その「竹尾」から紙の見本帳が届きました。
300銘柄、7,000種を収録した見本帳54冊。
あまりにもサイトに載っている紙の種類が多すぎるんです。
どれを選んでいいかわからなくなって、思わず「一括購入」のボタンをクリックしたら大変なことに。
段ボール箱一杯分の紙見本帳が届いた時には、本当に驚きました。
写真は「きぬもみ紙」に銀箔押しの句誌「若竹」。
神戸市老人体育大学同窓会教養文化部が、句誌「若竹」の400号発刊を記念して発行したもの。
きれいですね。
(2016.12.11)
北摂叢書について
「北摂叢書」を立ち上げた時、私は48歳。
結婚して23年、結婚3年目に義母が倒れて介護生活に入りました。
気がつけば48歳。
同世代が子供を育てて、孫が生まれる話をしているのに、私ときたら、ただただ介護ばかりしていた。
結局、私には何もできなかった……
人生80年の折り返し地点を過ぎています。
残りの時間で何がやれるのか。
生まれ育ってきた北摂のために何をお返しできるのか。
自分に何ができるのか。
考えに考えた末に出た答えが「北摂叢書」でした。
「守り継ぐための出版支援事業」
それが「北摂叢書」のミッションです。
北摂に埋もれている優れた資料を掘り起こし、本や電子書籍の形にして、できるだけ多くの人に読んでいただき、国立国会図書館蔵書・地元の図書館蔵書・電子書籍の3つの形で次の世代のために残す。
だから「出版しませんか」と無理にお勧めしません。
書きたい思いの強い文章なら、たとえ拙い表現でも、よい作品が仕上がりますが、そうでないものは、後世に伝える価値のない作品になってしまうからです。
「ネットにあげれば無料で永久保存できる」
資料を保全する図書館側でも、最近主流になっている意見ですが。
ネットの無料サービスは広告費で成り立っていて、その企業や自治体の広告費が減って収益が悪化すれば、いともたやすくサービスが打ち切られます。
もちろん、データはすべて消去されます。
やはり、現時点では、数千年前の文献ですら残せる「紙」の方が強いです。
これから「北摂叢書」に対する私の思いを少しずつ書いていきます。
(2016.10.5)
装丁家・井上二三夫氏の仕事
「勁版会(けいはんかい)」は、30年以上の歴史がある「関西の出版に関わる人々」の親睦会。
今回の講師は、京都で33年装丁を続けておられるブックデザイナーの井上二三夫氏。
『自分の子どもに一番お似合いの服を着せてあげたい』
そんな気持ちで常に仕事をされているとのこと。
「タイトルは漢字・ひらがな・カタカナで全然違うデザインになる。そこが面白い」
「長く読まれ続ける本にしたいので、流行のデザインではなく、スタンダードなものを心がける」
「100点満点のデザインは偶然にしかできない。常に70点以上のデザインをするのがプロ」
参考になる話をたくさん聞くことができました。
最近では予約制の「手製本ワークショップ」も開催されているそうなので、ぜひ行ってみたいと思います。
(2015.6.21)